20世紀号に乗って (雪組) 感想
―喧しさが愛おしい公演―

概要

原作はブロードウェイの公演。潤色・演出は原田諒先生。
舞台演出家兼プロデューサーのオスカー・ジャフィーは失敗続きで破産してしまう。再起をかけて、かつての恋人であるオスカー女優リリー・ガーランドを出演させるために豪華客室列車「特急20世紀号」に乗り込む。しかしリリーは新たな恋人ブルースと乗車していて取り付く島もない。20世紀号がニューヨークに到着するまでに、オスカーはリリーを説得できるのか、というコメディ・ミュージカル。
望海さん体制の雪組で行われた、念願の明るい演目。

感想のまとめ

笑いが溢れる雪組公演！誰も彼もが喧しいけれど、その喧しさが癖になるし素敵。あちこちで広げられるコミカルな演技がすごく良くて、オペラグラスなしでも目が足りなくなる。タップダンスも格好良くて、特に最後のタップダンスはいつまでも見ていたくなる。
要所は雪組らしく聞き惚れるような歌でびしっと抑えてくる。一歩間違えばただのドタバタ喜劇だが、あちこちでお芝居を繰り広げながらも要所要所を歌でビシッと決めてくるのはさすが雪組。
皆凄い中で、一挙一動で笑いを巻き起こしていた存在が喧しいブルースと、絶妙な演技が光るドクター・ジョンソンが一押しの二人。

観劇日

2019/3/22, 2019/3/23 (東急シアターオーブ)
記念すべき初のオーブは雪組公演。 

以下ネタバレ注意

感想

• オスカー (望海さん)
  とにかく表情が喧しくて大好き。しかもかなりのオーバーリアクション。表情豊かで、顔も仕草も喧しい、けれどそこが好き。時々裏返りながら話す声や、ひっくり返るオーバーリアクションはコメディにバッチリ。走行中の列車内では聖書を買えないと言われた時の表情が凄く好き。いつもながら惚れ惚れする歌声、早口で捲し立てても聞き取りやすい滑舌も凄い。
  最後にリリーの本名を呼ぶシーンが凄く良くて、あのシーンは凄く格好良い。これまでのコメディな空気を一瞬でふっとばす格好良さ。
  最後に結婚式の様子で終わる姿はすごく新鮮で、あの幸せそうな望海さんと真彩さんを見られたことが、この公演で一番嬉しいことだなぁ、としみじみ思う。
  初日挨拶で見せてくれたシュッシュッポッポッのシーンも個性が出ていて好き。望海さんのシュッシュッポッポッが一人だけ物凄くパワフルな感じで、雪組を引っ張る人の力強さが出ていて凄く好きだった。
  
  
• リリー (真彩さん)
  この公演は真彩さんなしでは成り立たない！変幻自在の歌声、ヴェロニックを歌う時の煌めきと軽やかなダンス、激しいお芝居、早口なのに聞き取りやすい滑舌と真彩さんのためにある公演と言っても良い。キラキラ輝く真彩さんを堪能できるチャンス。
  台本を読んでもマグダラのマリアが頭を離れないシーンの、歌い方を一瞬で切り替ていくシーンが凄く素敵。激しいお芝居も好きだけど、ブルースとイチャイチャしている時も好き。あの幸せ空間が凄く好き。
  リリーの本名は英語ではないとすぐわかるけど、1回目の公演じゃわからないぐらい発音が凄かった。
  
  
• ブルース (彩風さん)
  存在が喧しくて大好き。出てくるだけで笑いを巻き起こす彩風さんはとても煌めいていたと思う。コミカルな動作がとても上手で、ドアにタックルするシーンや小切手が無価値になったことをリリーに知らせに行こうとする時のモーションが特に好き。ドアに挟まれてガンガン後頭部を打たれるシーンも凄く面白くて、体を張って笑いを取っていく彩風さんがすごく素敵。足が長すぎてサスペンダー姿が面白いという、スタイルの良さを無駄遣いする姿勢も凄く好き。
  カメラや鏡の前ではポーズを忘れず、リリーとはバカップル。第一幕終盤ではぴょんぴょん飛び跳ねながら登場したり、目立たぬ所で腕立て伏せや腹筋などの筋トレ。オスカーが死んだと思ったらドクター・ジョンソンにドン引きされるほどの号泣。とにかく目を離せない位喧しい。そんな喧しさの虜になってしまうような、喧しさと可愛さと格好良さを合わせた絶妙な演技がとても良かった。
  歌も凄く良くて、オスカーと一緒にリリーのことを歌うシーンは美声の共演で凄く良かった。綺麗なハーモニーを奏でる美声とは対象的に、絵面が喧しい点も大好き。
  最後のタップダンスでは、ビシッと格好良い佇まいと長い足を活かした軽やかなダンスが本当に良くて、いつまでも見ていたくなるぐらい格好良かった。
  
  
• フラナガン (彩凪さん)
  指先まで美しい演技をする彩凪さんにうってつけの車掌さん。ピシッとした車掌さんだから、彩凪さんの指先まで美しい演技がすごく映えて良かった。車掌姿も凄く格好良くて、白い服が特にお気に入り。軽やかな脚さばきのタップダンス、ピシッと指先まで美しい車掌姿と彩凪さんの魅力がたくさん出ていたと思う。
  
  
• オーエン (朝美さん) とオリバー (真那さん)
  オスカーといるときは息の合った三銃士…というよりも三馬鹿感、オスカーの後ろにいたりスポットライトが当たっていないときはそれぞれの個性が光る演技で演じ分けが良い。あの絶妙な自己主張がすごく好き。朝美さんはショレ役が凄く良い形で活きているなぁと思った。
  
  
• レティシア (京さん)
  パワフルでコミカル、そして可愛いおばあちゃんの感じがすごかった。こういうおばあちゃんいるよなぁ、という感じがしてきて凄く好き。お芝居も良いし、歌声も綺麗で素敵。
  
  
• ドクター・ジョンソン (久城さん)
  一挙一動で笑いを巻き起こしていたお医者様。オスカーが瀕死の芝居をするシーンで一番人気だったと思う。いつもは素敵な声が光る久城さんだけど、今回のお芝居は凄まじかった。状況への戸惑いからか膝を閉じて座る佇まい、何故か号泣しているブルースに「何だこいつ」と言わんばかりの視線を向ける姿、視線を感じるとブンブンと首を振る姿がすごく良かった。