シジミ少年の秀逸な死
―市川団八の魅力―

概要


市川団八はNightmare Syndrome様 (以下NS) のゲーム「シジミ少年の秀逸な死」に登場するキャラクターである。作品の感想は別記事 (リンク) に記載済み。
今回は作中で一番好きな市川団八について語る。NS作品には数多くの魅力的な作品・キャラクターがあったが、団八の異質さと煌めきは際立っている。10年以上彼の虜になっているが、すでにシジミ少年の秀逸な死を知っている人も少なく、語る機会もないからこその備忘録。

 

 

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空に刻んだパラレログラム
―シナリオが余りにも……―

概要


ウグイスカグラの3作目にして、初のスポーツ作品。
クオリアという魔法の力がある世界を舞台に、テレプシコーラと呼ばれる空を翔けるチーム競技に青春を捧げる学生たちの物語。

 

感想のまとめ


シナリオが足を引っ張っている作品。致命的なほど悪いシナリオのテンポ、終盤まで魅力的に見えないテレプシコーラ、薄すぎる個別ENDの三重苦。システム面は感動するほどパワーアップしていて、BGMも声優も良いがお勧めしない作品。
この作品を買うなら過去作品の「紙の上の魔法使い」や「水葬銀貨のイストリア」をお勧めする。

 

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水葬銀貨のイストリア 感想
―TRUEとBADが良い―

概要


紙の上の魔法使い」で脚光を浴びたウグイスカグラの2作目。
舞台は人魚姫の伝説が語り継がれている人工海上都市のアメマドイ。野望と陰謀が影で渦巻くこの街を舞台にした物語で、ポーカーがキーアイテム。キャッチコピーは「―ハッピーエンドを、約束しよう」。

感想のまとめ


伏線回収と終盤の盛り上がりが凄いシナリオゲー。個別ENDはかなり微妙だが、BAD ENDの完成度がピカイチ。人魚姫、ポーカーなどの設定を巧みに使ってシナリオを盛り上げている。キャラクターは茅ヶ崎征士の悪役ぶりがピカイチ。あまりに多すぎる誤字、TRUEと比べて弱すぎる個別END、テンポの悪い文章がネック。前作「紙の上の魔法使い」を楽しめたユーザーならばこの作品も楽しめるはず。

 

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ゲルニカ―仕方なくてやるせない―

概要


Nightmare Syndromeによる作品。NS作品でも屈指の鬱ゲーでリメイク前の作品。
青年は獣のような唸り声から逃げるように、わけも分からず遊園地内の城に駆け込んだ。そこは大人を敵視している子どもたちによる未完成の国だった。子どもたちは青年を殺そうとするが、何故か青年は体をバラバラにされても死ななかった。死ぬことも国を出ることもできない青年は、子どもたちが対処法を見つけるまで国内で暮らすことになる。そんな不思議で不条理な国での、青年と子どもたちの物語。

感想のまとめ


不条理で救われない超弩級の鬱ゲー。絶望感に満ちたゾクゾクするような演出が光る作品。呆然としてしまうような、あまりにもやるせない結末はオンリーワン。マリア、メイとビースト、ダフネがお気に入り。


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紙の上の魔法使い 感想
―ウグイスカグラ作品で随一のシナリオとギミック―

概要


ウグイスカグラの初作品であり、シナリオに定評のあるウグイスカグラの代表作。
舞台はとある島の小さな個人図書館。「書かれた物語を現実に再現してしまう」、そんな不思議な魔法の本とともに紡がれていくストーリー。キャッチコピーは「君と本との恋をしよう」。

感想のまとめ


最大の特長はウグイスカグラ作品でも随一の完成度を誇るシナリオ。ウグイスカグラ作品を購入するならばこの作品がおすすめ。この作品を楽しめたら、次回作の「水葬銀貨のイストリア」もおすすめ。
回想と魔法の本によって掘り下げられていく物語、劇中劇としてテンポの良いアクセントとなる魔法の本、過不足のないボリューム、テーマを完璧にまとめ上げたエンディングとどの要素も素晴らしい。
魔法の本のギミックが絶妙で、テンポよく紡がれていく物語は劇中劇として楽しめるだけでなく、物語の展開やキャラクターの掘り下げに重大な役割を持っている。
伏線の回収も巧みで、早めに回収されて心地よく読み進められるもの、忘れた頃に回収される大きな伏線など、使い分けも良い。

良かった点


【システム・シナリオ】

  • 完成度の高いシナリオ
    シナリオの完成度はウグイスカグラ3作品 (2020年4月現在) の中でも随一で、ウグイスカグラ作品をプレイしたい人におすすめ。この作品を楽しめたら、次回作の「水葬銀貨のイストリア」もおすすめ。
    ライターのルクルさんとテーマとの相性が抜群。回想と魔法の本によって掘り下げられていく物語、劇中劇としてテンポの良いアクセントとなる魔法の本、過不足のないボリューム、テーマを完璧にまとめ上げたエンディングとどの要素も素晴らしい。

  • 魔法の本のギミックが絶妙
    書かれた物語を現実に引き起こしてしまう、魔法の本。この扱いが絶妙。テンポよく紡がれていく物語は劇中劇として楽しめるだけでなく、物語の展開やキャラクターの掘り下げに重大な役割を持っている。使い方も巧みで、後で感心するような使い方が目立つ。

  • 伏線回収のテンポが良い
    伏線かな?と思ったものの多くは回収されていく。早めに回収されて心地よく読み進められるもの、忘れた頃に回収される大きな伏線など、使い分けも良い。

【キャラクター】

  • 印象的なキャラクター
    各キャラクターは作中での役割がはっきりしている。そのため見せ場では、スポットライトを浴びて輝くように強烈な印象を残す。どのキャラクターも印象深いが、妃とかなたは一度見たら忘れられないような強烈な印象。

  • ボイスはイメージにぴったり
    ウグイスカグラ作品はどのキャラクターもイメージ通り。憎らしく思えるようなクリソベリル、不慣れな激昂で息が漏れがちになる夜子が特に良い。

【音楽】

  • 数は少なくとも印象に残る楽曲
    実はウグイスカグラの一番の強みかもしれない、めとさんの音楽。どの曲も印象的で、OPやEDがないことの不満も吹き飛ばすような余韻ある音楽。特に廃教会での音楽がとても良い。

【絵】

  • 癖のない、可愛らしい絵柄
    シナリオは癖が強いが、絵は癖がなく可愛らしい。シナリオに対して清涼剤のような役目を果たしている。

人を選ぶ点


【シナリオ・システム】

  • 凄まじい量の誤字脱字
    推敲せずにマスターアップしたかと疑うような、凄まじい量の誤字脱字。誤変換や怪しい日本語も多く、誤字をスムーズに読み替える能力は必須。次回作以降も改善していないので、ウグイスカグラ作品を楽しめるかのリトマス試験紙になる。

  • OP/EDすらないシステム面
    テーマ的に演出がないことがあまり気にならないが、演出らしい機能は殆どない。OP/EDすらないのはとても残念。ちなみに修正パッチを当てないと、あるシーンでセリフごとに早着替えを繰り返すバグが発生する。
    余談だがYouTubeにて本作のプロモーションビデオが公開されていて、そのクオリティがとても高い。それ故にOP/EDがないことがとても悔やまれる。

  • 各エンディングはかなりあっさり
    TRUEに向けてすべてをまとめ上げるライターなので、各エンディングはかなりあっさり。本作では書くべき物語をすべて語り終えているので満足だが、人によっては不満を持つかもしれない。

  • 予想と異なる方向へ進む物語
    予想と異なる方向へ進んでいく物語なので、パッケージや体験版から結末を期待しないほうが良いかもしれない。

【キャラクター】

  • 役割が明確すぎるキャラクター
    キャラクターの役割が明確なので、キャラクターが躍動するというよりも、物語を演じるためにキャラクターがいる印象を受ける。劇のような役割分担は、好き嫌いが分かれるかもしれない。

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鬼ガナクセカイガ魔王
―殺さない選択の素晴らしさ―

概要


Nightmare Syndrome様による作品。
ある化学者があらゆる病気を治す特効薬を発明した。世界に平和が訪れたが、平和な世界では生きていけない医療研究所は絶望していた。彼らが新たに発明したウィルスによって、世界は奇病患者で蔓延してしまった。特効薬を発明した化学者は完全な延命装置を1台発明するも殺害されてしまい、延命装置は闇ルートに流れてしまう。たった一台の延命装置が存在する、奇病が蔓延した世界で生きる末期の奇病患者たちの物語。
ブログでBAROQUEを好きと語っていたためか、どことなくBAROQUEを思い出す世界観。

感想のまとめ


不条理な世界観なのに、爽やかな読後感が素晴らしい作品。緊迫感のある戦闘シーンとお屋敷での穏やかな時間の緩急がとても良い。紅葉の生き方にメンバーが感化されていく流れがとても素敵。ロサとゴズメズがお気に入り。

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しらゆきひめからしんでれらまで。
―主の衣装替えを楽しむ平坦な物語―

概要


Nightmare Syndrome様の作品。素晴らしいお屋敷に住む主のお嬢様と、彼女に仕える執事長のおとぎ話。主様の衣服と装飾品を変えながら、他愛ない日常といろいろなおとぎ話を楽しむ作品。

感想のまとめ


平坦な物語だけどそれが良い。主の衣装の変わり方がとても映えていて、お屋敷の退屈さも体感できる面白さ。最後まであっさりと終わるので読後感もスッキリとした作品。記憶に残りやすいおとぎ話が後々の伏線になっている演出も良い。

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シジミ少年の秀逸な死
―「死ぬなら今日、ということか。」―

概要


「Nightmare Syndrome」 (以下NS) の作品で、臨死体験ADV。
自動車が現れ始め、土葬から火葬へ移りつつある時代の田舎を舞台とした作品。
主人公・しじみの通う学級では、「死にたいから死にます。許してください。許さないで下さい。」と書き残し突然自殺した生徒をきっかけに、同級生たち、さらには先生まで自殺してしまう。死が伝染してしまったこの学級は、明日から学級閉鎖することが決められた。「死ぬなら今日、ということか。」そんなことを呟く親友・団八たちと過ごす、学級閉鎖前の最後の一日を描いた作品。

感想のまとめ


人を選ぶ作品の極致。作品に漂う死の香りに魅入られると抜けられなくなる雰囲気が素晴らしく、10年以上経った今でも抜け出せない魅力がある。
救い、憧れ、恐怖など様々な側面を持ち、常に傍らにあるけれど隔たりがあり、どこか冷たい死のイメージが絶妙。
団八ルートでの会話シーンからクライマックスへ向かう激しい流れは、NS作品でも屈指の素晴らしさ。

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神捕 (アヤトリ)
―神様との鬼ごっこ―

概要


神様を殺したという不思議な記憶を持つ偉鏡は、彼の願いを叶えに来たという少年・月霞の暮らす村に誘われる。その村には「神様のお声を耳に入れてはならない」「自分の声を神様に聞かれてはならない」「自分の姿を神様に見られてはならない」と3つの禁忌があるという。その村で偉鏡は神様を目撃する。しかしその際に姿を見られた偉鏡と月霞は神様から逃げるため、神様と鬼ごっこをする事になってしまう。同じく禁忌を破ってしまった眞夏と葉雪、花蜜と玉雄という3組のペアの視点から描かれる神様との鬼ごっこ。
「Nightmare Syndrome」 (以下NS) 様の作品。本作はシナリオを委託した作品で、いつものNS作品とはまた違った味のある作品。

感想のまとめ


短いシナリオでコンパクトにまとめ上げられた作品。
作中に漂う神秘的な雰囲気、異形の神様という不気味な要素、終盤の疾走感としんみりと、けれど爽やかに終わる結末がとても良い。

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古色迷宮輪舞曲 感想
―シナリオとギミックが完璧なノベルゲーム―

概要


紅茶専門店「童話の森」でアルバイトをすることになった名波 行人 (ななみゆきと) 。アルバイト初日に店へ届いた不審な木箱を開けると、メルヘンな服に身を包んだサキという少女が現れる。サキは行人に、運命の輪が狂っていると告げる。運命の輪が狂ったままだと行人は一週間後に死ぬことになり、周囲の人物にも不幸が訪れるという。行人は半信半疑ながらも、運命の輪をもとに戻そうと奔走する。
Yatagarasuの18禁ノベルゲームで、ジャンルは「運命操作アドベンチャー」。プレイヤーが適した場面でキーワードを投げかけることで、物語を変化させていく独特のシステムが特徴。

感想のまとめ


ノベルゲーでしか出来ないギミックを活かした、非常に高い完成度のシナリオが素晴らしい作品。いくつもの結末を見た後にたどり着くGood Endは非常に感動的。ギミックをうまく使って描かれたテーマの描き方も完璧。 エロゲでこれほど素晴らしい作品に出会う機会はもうないかもしれないが、この作品に出会えて本当に良かったと思える。

良かった点


【シナリオ・システム】

  • ゲームシステム、フローチャート、シナリオの融合
    キーワードによって物語が変化し、点と点を結ぶように全容が明らかになる物語。ノベルゲーにしかできない、物語のIFを何パターンも体験できるシステムがとても良い。何パターンもの物語を見て、物語を理解していく作りが素晴らしい。

  • Good Endの素晴らしさ
    物語を読み進め、運命を操作してたどり着くGood End。それまでの物語の重さもあり、このゲームをプレイすることが出来て良かったと感動した。

  • テーマに対する答えが心に響く
    狂った運命の輪を戻すために、キーワードを投げかけて運命を変えていく。この「狂った運命の輪を戻す」というテーマに対して、最後に得られた答えが本当に素晴らしい。

  • 予想を遥かに超えていく物語
    キーワードによって物語を変化させていくことで、物語は予想と異なる方向へ変化してく。予想もしなかった展開へ進んでしまう物語を前に、この先どうなってしまうのだろうか、と思いながら読み進める感覚がとても良い。

  • 随所に張り巡らされた伏線
    何気ない日常シーンにも伏線が多く存在する。気づかなくても楽しめるし、気づけば後でそういうことかと納得する。日常シーンも飽きさせない良いシナリオ。

  • 作品の雰囲気
    狂った運命の輪を戻すというテーマなので、死の香りがそこはかとなく漂う。文章、音楽の両方で作られるこの独特の雰囲気が非常に良い。

  • 各章のタイトル
    フローをよく見ることになるため、各章のタイトルを見直すことが多い。ふと見たときにクスッと笑えるタイトルやなるほどと思うようなタイトルが多く、タイトル情報も楽しめる。

  • 紅茶の豆知識が豊富
    紅茶専門店を舞台にしているので、紅茶の入れ方など豆知識が豊富。プレイしていると紅茶を飲みたくなる作品。

【キャラクター】

  • 魅力的なキャラクター
    読み進めていく中キャラクターの魅力がどんどん増してくる。クリアする頃には幸せになってほしいと思える良いキャラクターたちだと思う。

  • 可愛い店長
    童話の森の店長・古宮舞 (まい) が本当に可愛い。重いシナリオの中で、彼女の存在が救いだった。

【絵】

  • 所々で印象的なイラスト
    イラストが売りの作品とは思わないが、所々で印象的でイラストがあるのが良い。サキの服のデザインや、ゾッとするシーンのイラストが特に好き。

【音楽】

  • 聞き心地の良い音楽
    落ち着いているけれどどこか寂しい音楽が多く、聞いていて心地よい。何回も耳にする音楽も多いが、物語の雰囲気と凄く合っていると思う。

人を選ぶ点


【シナリオ・システム】

  • キーワードがわかりにくい
    キーワードは名詞の割合が高く、ピンとこないものも多かった。キーワードをぼかした例だと、パスタを食べる場面で「パスタ」を選ぶ必要があり、「食べる」がキーワードにないことがある。難しくはないが、若干のやりにくさを感じる。

  • ノベルゲームに慣れていないと大変かも
    システムが独特なので、ノベルゲームというシステム自体に慣れていないと二重の苦しみを背負うリスクがある。何作かノベルゲーをプレイした後がオススメ。

  • 独自性や目新しさを重視する人とは相性が悪いかも
    最大の強みはシステム・シナリオ全体の完成度なので、システムの独自性や目新しさを重視する人とは相性が悪いかもしれない。他でも存在するシステムもあるようだが、それらをうまく昇華させたのがこの作品の売りだと思う。

【キャラクター】

  • 共感することが難しそうなキャラクター
    これは好みの問題。私は共感できることを重視せず、理解できるかが重要というスタンス。ただキャラクターに共感してなんぼという人とは相性が悪いと思う。良くも悪くも極端な思考のキャラクターが多く、どれだけ心情を描写されても理解はできても共感はできないかもしれない。

【絵】

  • 絵が不安定
    複数担当なのか絵がかなり不安定。絵が命という人にはネックかも知れない。

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